熟年離婚とお金
熟年離婚では、退職金、自宅の財産分与が問題となります。
退職金については、既に支給を受けている場合は別居時の夫婦共有の金融資産を問題とすれば良いのですが、熟年離婚では、お金の中に相続した特有財産が含まれていることが多く、特有財産をどのように除外するかの問題を生じます。
親から贈与を受けた財産で自宅を購入した場合は、自宅土地建物の現在の価格に占める特有財産と共有財産の割合で除外部分を特定するのが裁判所の考え方です。
退職金については、支給前でも財産分与の対象となることは、財産分与の退職金をご覧ください。
熟年離婚と相続
熟年離婚では、離婚しなくとも、相手方が死亡すれば離婚したと同じでしかも、特有財産も含め財産の2分の1が相続できることも考えなければなりません。
そうすると離婚を急ぐ側は、相手方に対する財産分与は大幅に譲歩しなければ離婚してもらえないことになります。
離婚を急がない側は、条件が気にいらなければ、相続を待てばよいわけですが、相手方が、財産を浪費したり、隠匿したり、遺言により相続分を減らしたりすることを覚悟しなければなりません。
そうすると、財産的要求は、遺留分の金額である総財産の4分の1(子供のある場合)を限度とすべきことになります。
熟年離婚のメリットとデメリット
熟年離婚のメリットは、お金をもらえるほうは、財産分与、年金分割により、安定した生活をおくれる。
お金を払うほうは、居住不動産の価格が高い場合は、老後の資金が大幅に減る上、年金も大幅に減少するため、生活に困窮して不動産を売却しなければならなくなるというデメリットがあります。
熟年離婚の事例
昭和48年 | 結婚 |
平成 5年 | 自宅購入 長男、長女既に独立 |
平成16年 | 夫退職、住宅ローン完済 |
平成21年 9月 | 別居 妻家を出る。原因夫の暴力 |
平成22年 1月 4月 7月 |
妻離婚調停申立 調停不成立 婚費1か月2万円を夫に支払を命ずる審判 夫の年収 408万円 妻の年収 273万円 |
平成23年 6月 | 妻離婚訴訟提起 |
平成25年 | 判決言渡し 慰謝料 300万円(婚姻期間39年) 財産分与/妻に自宅、企業年金の価額の2分の1のお金の支払を夫に命ずる。 年金分割 0.5 |
平成25年5月 | 妻申立により夫の居住する自宅競売に |
熟年離婚の注意点
離婚を望む夫は妻を追い出せば、足りると考えています。しかし、妻が離婚せず婚姻費用分担の申立をすると裁判所はこれを認めるので、弁護士に依頼して離婚訴訟をせず、婚姻費用の分担に相手になっていると多額の婚費の負担を強いられます。
離婚を望む妻は収入がないので、事例のように夫と同居したまま離婚を主張することが多く、裁判所は破綻の認定に困って、離婚請求を棄却することもあります。
以上から、離婚を望む夫は、財産分与、婚姻費用の分担を覚悟した上で、離婚の交渉に入り早期に離婚することです。離婚を望む妻は、別居した上で、離婚の交渉をして、交渉決裂したら、調停申立して、2年ほど別居期間が経過したあとで訴訟をすべきでしょう。
熟年離婚は経験ある弁護士に依頼しましょう。
熟年離婚は経験ある弁護士に依頼しましょう。
熟年者は、子供の問題がない一方で、相当の財産を所有していますので、この財産分与や相続についてアドバイスできる能力が必要です。不動産の評価にも精通していることが要求されます。
以上から、十分な経験を積んだ弁護士にまず相談し、必要であれば、税理士、不動産鑑定士、不動産業者等に財産評価に関する意見を求めるのが良いです。
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この記事の執筆者
弁護士 藤井義継
専門分野
離婚・相続など家事事件
経歴
昭和63年に弁護士登録後、神戸市の事務所勤務を経て、平成4年に藤井義継法律事務所を開設。相続、離婚、不動産トラブルなど、家事・民事事件を多く取り扱う。
弁護士会の活動として、神戸地方裁判所鑑定委員や神戸地方法務局筆界調査委員を経験。平成16年には兵庫県弁護士会副会長も経験している。
弁護士歴30年以上の豊富な実績があり、離婚問題の早期解決を得意としている。